社会保険労務士 工藤総合保険事務所

今月のQ&A(質問と答え)

特別編 パートタイム労働者の雇用管理上注意点


 当社ではパートタイム労働者が非常に多いのですが、雇用管理上注意すべき点を教えて下さい。

 我が国の経済社会において、パートタイム労働者が重要な役割を果たしてきていることから、その福祉の増進を図ることを目的として、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」が平成5年6月に成立し、同年12月から施行されています。
パートタイム労働者に対しては、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働者災害補償保険法などの労働者保護に関係する法令が適用されますが、パートタイム労働法は、これらの法律をさらに補完、強化するものといってよいでしょう。
そして、その雇用管理の改善において、適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めるものとして、パートタイム労働法第8条に基づき定められているのが、「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針(パートタイム労働指針)」です。
以下に、このパートタイム労働指針に沿って、事業主がパートタイム労働に対する雇用管理の改善のために講ずべき措置について、事例を交えながらまとめました。
なお、パートタイム労働者についての呼称や定義は、各事業所によっても異なりますが、パートタイム労働法では、「短時間労働者」という呼称を用い、これを「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者」と定義しています。

1.労働条件の明示

雇入れの際には、労働条件を書面で明示すること

事業主は、パートタイム労働者を雇い入れる際には、労働基準法の定めるところにより、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。さらに、特定の項目については、文書の交付によって明示する必要があります。
具体的な項目については、労働基準法第15条及び同法施行規則第5条で定められているところですが、パートタイム労働指針第1(1)イでは、これらの規定を踏まえ、事業主がパートタイム労働者との労働契約の締結に際し、労働条件に関する事項を明らかにした文書を交付すべきことを改めて求めています。
また、ロでは、労働基準法上は、書面による明示が義務付けられていない項目であっても、パートタイム労働法第6条を踏まえ、文書による明示に努めるものとする項目を具体的に挙げ、これらをイの項目と併せて雇入通知書の交付によって明示するよう求めています。

明示すべき労働条件

書面で明らかにしなければならないもの 書面で明らかにするよう努めるもの
(イ) 労働契約の期間 (イ) 昇給
(ロ) 就業場所、従事すべき業務 (ロ) 退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与
(ハ) 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換 (ハ) 所定労働日以外の日の労働の有無
(二) 賃金の決定、計算及び支払方法、締切り時期、支払時期 (二) 所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度
(ホ) 退職 (ホ) 安全及び衛生
(へ) 教育訓練
( ト) 休職

2.就業規則の整備

パートタイム労働者を含め、常時10人以上の労働者を使用する事業主は、パートタイム労働者にも適用される就業規則を作成すること

事業所によっては、パートタイム労働者に適用される就業規則がなかったり、就業の実態に合わないにもかかわらず、通常の労働者の就業規則をそのまま準用するなどの例もみられ、このことが、労使間のトラブルを生じさせる原因となっている場合があります。
こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、パートタイム労働指針で確認的に明記しているように、パートタイム労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する事業主は、労働基準法第89条の定めるところにより、パートタイム労働者にも適用される就業規則を作成する必要があります。この場合、具体的には、通常の労働者の就業規則に特別条項を設けるか、パートタイム労働者専用の就業規則を作成することになります。

就業規則は、労働者に交付したり、職場の見やすい場所に掲示したりして、いつでも見られるようにしておくことが義務付けられています。(労働基準法106条)

●就業規則に記載する内容
項目 細        目
労働時間
休 暇 等
  • 始業・終業時刻、休憩時間、休暇、交替制勤務
賃金
  • 賃金の決定・計算・支払方法、締切日、支払時期、昇給
  • 退職金(対象者の範囲、決定・計算・支払方法、支払時期)
  • 臨時の賃金、賞与、1か月を超える期間を基準に支給される精勤手当・勤続手当等、最低賃金額
人事
  • 退職(解雇を含む)
  • 表彰、制裁
安全衛生
  • 安全・衛生
  • 労働災害補償、業務外の傷病扶助
教育訓練
  • 職業訓練
その他
  • 労働者に負担させる食費、作業用品等
  • このほか、事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合にこれに関すること

●就業規則の作成・変更の手続

就業規則を作成又は変更するときには、使用者は、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)の意見を聴き、その意見書を添えて労働基準監督署に届け出る必要があります。(労働基準法第90条)
その際、パートタイム労働者の意見も反映されることが望ましいといえます。
パートタイム労働法では、事業主は、パートタイム労働者に係る事項について就業規則を作成又は変更するときは、事業所のパートタイム労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことを求めており、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な扱いをしないようにするものとしています。

●過半数代表者の要件

就業規則を作成又は変更するときに意見を聴取する過半数代表者は、

  1. 監督又は管理の地位にある者でないこと
  2. 就業規則の作成又は変更に係る意見を事業主から聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法により選出された者であること。

3.労働時間

労働時間・休日の設定には、パートタイム労働者の事情を考慮し、できるだけ時間外労働や休日労働をさせないようにすること

パートタイム労働者の多くは、家庭生活との両立のため、短時間かつ自己の都合に合う一定の就業時間帯を前提として勤務している者であり、事業主は、このようなパートタイム労働者の事情を十分考慮して労働時間・労働日を設定するように努め、できるだけ所定労働時間外又は所定労働日以外に労働させないように努めることが必要です。
また、所定労働時間又は所定労働日以外に例外的に労働させることがある場合には、雇入れの際にその旨及びその程度について明示しなければなりません。

4.年次有給休暇

パートタイム労働者にも所定労働時間・日数に応じて比例付与すること

パートタイム労働者についても、雇入れ日から6か月間継続勤務し、所定労働日数の8割以上出勤すれば、労働基準法で定める有給休暇が与えられ、その後は勤続年数に応じて日数が加算されていきます。期間の定めのある労働契約の場合でも、契約更新により6か月間継続勤務すれば上記の要件により有給休暇が与えられます。継続勤務か否かは、勤務実態から実質的に判断されます。
使用者は、休む理由によって休暇を与えないことはできません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、その時季の変更を求めることができます。
なお、その年に取得できなかった休暇日数分は翌年に繰り越すことができます。

※出勤率の計算
業務上の負傷・疾病の療養のための休業、育児休業、産前・産後休業及び年次有給休暇を取得した期間は、出勤したものとみなします。

●所定労働日が少ない労働者に対する比例付与
所定労働日数が通常の労働者よりも少ないパートタイム労働者には、その週又は年間の所定労働日数に応じて比例的に与えられます。ただし、所定労働時間が週30時間以上であれば、通常の労働者と同じ日数が与えられます。なお、法定の比例付与日数は、最低日数ですから、これを上回る日数を付与しても構いません。

5.期間の定めのある労働契約

期間の定めのあるパートタイム労働者の1年以上使用後の契約更新は、できるだけ長い契約期間を定めるよう努めること
雇止めをする場合には、30日以上前に予告するよう努めること

パートタイム労働者の中には、短期の契約が反復更新され、結果として相当年数の勤続となっている者も少なくありません。このような場合、労働者に雇用の継続に関し無用の不安を与えないためにも、労働契約の更新により、引き続き使用する場合には、労働基準法第14条に基づく制限の範囲内(最長1年、ただし、満60歳以上の者との契約などの一部例外については3年)で、契約期間をできるだけ長くするよう努めることが求められています。なお、その場合に、労使において労働契約に期間の定めを設ける特段の必要性がないと認める場合には、期間の定めのないパートタイム労働者として使用するようにしましょう。

また、期間の定めのある労働契約の反復更新によって、実質上期間の定めのない労働関係になったと認められる場合には、労働基準法第20条(解雇の予告)が適用されます。
同条が適用されない場合であっても、1年を超えて引き続き、パートタイム労働者を使用するに至った場合で、次回の更新をせずに、期間の満了により終了させる(いわゆる「雇止め」をする)ときは、少なくとも30日前に予告するよう努めることが求められます。

6.解雇

解雇には合理的な理由が必要
解雇する場合には、30日以上前に予告すること

●期間の定めのある労働契約の場合
その期間内は原則として解雇することはできませんが、その期限が来れば雇用関係は終了することになります。
しかし、期間を定めた労働契約を繰り返し更新し、ある時点で使用者が更新拒絶(雇止め)をした場合、それが解雇なのか退職なのかが争われることがあります。

●短期契約の反復更新の場合
短期契約を反復更新し、形式的には雇用期間の定めがあっても、実質上は期間の定めのない労働関係と認められる場合などには、契約期間の満了によって使用者が一方的に労働契約を終了したとすると、解雇に準じて考えなければなりません。
ただし、期間の定めのある労働契約が、いかなる時点、状態から実質上期間の定めのない労働関係になったと認められるかについては、実態に応じて個別に判断すべきものです。

解雇に関することは就業規則に定めておく必要がありますが、解雇されるということは労働者にとって重大なことですから、解雇には十分合理的な理由が必要とされ、次の4要件が示されています。

判例による整理解雇の要件

  1. 人員整理の必要性
  2. 解雇回避努力義務の履行
  3. 被解雇者選定の合理性
  4. 手続の妥当性

●法律で禁止されている解雇

●解雇の予告

事業主は、パートタイム労働者を解雇しようとする場合、労働基準法の定めるところにより、少なくとも30日前(予告に代えて、予告日数に相当する平均賃金を支払った場合には、その日数を短縮できる)までに解雇予告をし、これをしない事業主は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。(労働基準法第20条)

7.退職

パートタイム労働者が退職に際し請求したときは、証明書を交付すること

労働者が退職を申し出て使用者が同意すれば雇用関係は終了しますが、退職の時期などについて両者が十分に話し合うことが望ましいでしょう。
使用者の同意がなくても、期間の定めのない労働契約の場合、当事者間の特約がなければ、労働者が退職の意思表示をして2週間経過すれば雇用関係は自動的に終了します。
期間の定めのある労働契約の場合は、雇入れ時に明示された労働条件と事実が違う場合や、やむを得ない事情がある場合を除き、原則として使用者の同意がなければ期間の終了までは退職できません。

●退職時の証明

事業主は、労働者からの退職の際に請求があった場合には、退職の事由などの証明書を交付しなければなりません。
労働基準法が定める証明事項は、

  1. 使用期間
  2. 業務の種類
  3. その事業における地位
  4. 賃金
  5. 退職の事由(退職の事由が解雇の場合には、その事由を含む)です。

ただし、労働者の請求しない事項は記入できません。(労働基準法第22条)
なお5.は、労働契約が終了する時に労働関係の内容を明確にし、退職に関する紛争を未然に防止するという目的で、平成10年の法改正で新たに加えられました。

8.賃金 賞与 退職金

賃金支払の5原則や労働基準局が公示する最低賃金は、パートタイム労働者にも適用される

●賃金支払の5原則(労働基準法第24条)

1.通貨で、2.本人に直接、3.全額を、4.毎月1回以上、5.一定の期日
に支払われなければならない。
ただし、労使の合意などの一定の要件を満たす場合には、口座振り込みも認められています。

●男女同一賃金の原則(労働基準法第4条)

女性であることを理由に、賃金について男性と差別的な取扱いをすることは禁止されています。

●パートタイム労働者の昇給、賞与、諸手当、退職金

これらの有無については、法律で決められているものではなく、労働者と使用者の交渉によって決められるものです。手当についても時間外、休日労働、深夜業の割増賃金、休業手当(使用者責任で休業させた場合、平均賃金の60%以上)を除くと法律上の規定はありません。労働契約や就業規則などにあらかじめ定めがあれば支給されます。
パートタイム労働指針では、事業主に、パートタイマーの賃金、賞与については、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように求めています。
つまり、業務内容、労働時間や契約期間、勤続年数、職業能力などについて、通常の労働者と比較したときのバランスを考慮しながら決めてくださいということです。

●中小企業退職金共済制度

中小企業退職金共済法に基づき勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部が運営しており、事業主が毎月掛金を納付することで、従業員が退職した場合に中退共事業本部から退職金が支給される制度です。週所定労働時間が30時間未満のパートタイム労働者については、掛金の特例があります。

●割増賃金(労働基準法第37条)

時間外労働には2割5分以上休日労働には3割5分以上深夜労働には2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。
時間外労働が深夜に及んだ場合は、深夜労働の2割5分以上の割増し分に、時間外労働の2割5分以上の割増し分が加算され、5割以上の割増しが必要です。

9.健康診断

常時使用するパートタイム労働者には、労働安全衛生法に基づく健康診断を実施すること

労働安全衛生法では、安全で健康な職場づくりのため、事業主に、採用時や配置転換時などに労働者に対する安全衛生教育の実施を義務付けており(労働安全衛生法第59条)、パートタイム労働者もその対象となります
また、事業主は、パートタイム労働者に対し、労働安全衛生法で定めるところにより、次に掲げる健康診断を実施する必要があります。(労働安全衛生法第66条)

  1. 常時使用するパートタイム労働者に対する雇入時健康診断、定期健康診断(1年以内1回)
  2. 深夜業を含む業務等に常時従事するパートタイム労働者に対する配置転換時健康診断、定期健康診断(6か月以内ごとに1回)
  3. 一定の有害な業務に常時従事するパートタイム労働者に対する雇入時健康診断、配置転換時健康診断、定期特殊健康診断
  4. その他必要な健康診断

常時使用するパートタイム労働者
原則として、次の2つの要件を満たす者をいいます。

  1. 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、契約の更新により、原則として1年(労働安全衛生規則第13条第1項第2号の業務従事者は6か月)以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)
  2. 1週間の労働時間数が同一事業場で同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上の者(2分の1以上のパートタイム労働者についても健康診断を実施することが望ましいとされています。)

10.妊娠中及び出産後における措置

妊娠中及び出産後1年以内のパートタイム労働者には産前産後休業、健康診査などを受けるために必要な時間の確保などの措置を講ずること

1.産前産後休業(労働基準法第65条)

<産前休業>
出産予定の女性は、本人が請求することにより、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から産前休業を取ることができます。

<産後休業>
産後については、本人から請求がなくても、産後8週間は原則として仕事に就かせてはなりません。

<休業中の賃金>
法律で特に定めていませんので、労働者と使用者の話合いにより決めることになります。なお、健康保険に加入していれば、出産一時金(30万円)や産前・産後休業中に賃金の支払がない場合、1日につき標準報酬日額の60%(出産手当金)が支給されます。

※産前・産後休業中及びその後30日間の解雇並びに婚姻、妊娠、出産、産前・産後休業の取得を理由とする解雇は禁止されています。

2.通院時間の確保(男女雇用機会均等法第22条)

事業主は、妊娠中及び出産後の女性労働者が、本人を対象に行われる産科に関する診察や諸検査とその結果に基づいて行われる個人を対象とした保健指導を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。

3.医師などの指導事項を守ることができるようにするための措置(男女雇用機会均等法第23条)

妊娠中及び出産後の女性労働者が、健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合は、その女性労働者が、その指導を守ることができるようにするために、事業主は、勤務時間の変更や勤務の軽減などの措置を講じなければなりません。
具体的には、

ア 妊娠中の通勤緩和
  時差出勤、勤務時間の短縮など
イ 妊娠中の休憩に関する措置
休憩時間の延長、休憩回数の増加など
ウ 妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置
医師などの指導に基づく作業の制限、勤務時間の短縮、休業など

4.妊産婦(妊娠中又は産後1年を経過しない女性)から請求があった場合の制限など

ア 危険有害業務の就業制限(労働基準法第64条の3)
イ 時間外労働、休日労働、深夜業の禁止(労働基準法第66条)
ウ 変形労働時間制の適用制限(労働基準法第66条)

5.軽易業務転換(労働基準法第65条)

妊娠中の女性から請求があった場合、軽易な業務へ配置換えをしなければなりません。

6.育児時間(労働基準法第67条)

●生後1年未満の子どもを育てている女性は、休憩時間とは別に、1日2回、それぞれ少なくとも30分の育児のための時間を請求することができます。

●育児時間中、使用者はこの女性を仕事に就かせることはできません。

●1日のうちのどこで育児時間をとるかは、労働者と使用者が話し合って決めますが、一般的には本人の請求した時間になるようです。職場から遠い施設や家に子どもを預けている女性のために、育児時間を勤務時間の始めや終わりとしたり、1日1回60分という形でもよいでしょう。

1日の労働時間が4時間以内の女性パートタイム労働者の育児時間については、その請求により、1日1回少なくとも30分を与えればよいとされています。

育児時間中の賃金を有給とするか無給とするかは、労働者と使用者の話合いにより決めることになります。

11.教育訓練

パートタイム労働者の能力開発のための教育訓練は、その就業の実態に応じて実施すること

<キャリア形成の現状>
これまで、パートタイム労働は、短期の補助的な労働として性格づけられ、キャリア形成の機会はほとんどありませんでした。しかし、近年、パートタイム労働の勤続年数が長期化するとともに、職務の性格についても、基幹的な職務や専門職等高度な職務に従事する者も増加してきています。

パートタイム労働者の能力開発などのための教育訓練については、専門職を含めた今後の就業分野の拡大、就業意欲の向上という観点も踏まえ、その就業の実態に応じ、計画的に実施するように努めましょう。

12.福利厚生施設

パートタイム労働者に対しても、福利厚生施設の利用について正社員と同様の取扱いをするように努めること

企業が設置している福利厚生施設の利用について、パートタイム労働者には認めないことがあると、パートタイム労働者に不公平感を生む場合があります。合理的理由がある場合を除き、更衣室、休憩室、食堂、物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書室、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設などの福利厚生施設については、パートタイム労働者に対しても利用を認めるように努めましょう。

13.育児・介護休業

パートタイム労働者であっても、法で定める対象者には、育児・介護休業を与えること

事業主は、パートタイム労働者に対しても、法で定める対象者に対しては、育児・介護休業法に基づき、適正な措置を講ずることが必要です。

14.雇用保険

パートタイム労働者であっても、法に定める対象者には、必要な手続きをとること

●雇用保険
労働者が失業した場合などに必要な給付を行い、労働者の生活や雇用の安定を図り、求職活動を容易にすることなどを目的としています。
原則として、一人でも労働者を雇用している事業所は必ず雇用保険に加入しなければなりません。保険料は労使それぞれが負担します。

●パートタイム労働者の加入要件
パートタイム労働者であっても、労働時間や賃金その他の労働条件が就業規則などで定められていて、次の二つの要件を満たせば短時間労働被保険者となり、事業主は資格取得手続を行う必要があります。

  1. 1週の所定労働時間が20時間以上であること(30時間以上であれば、短時間労働被保険者以外の一般被保険者に該当)
  2. 1年以上継続して雇用されることが見込まれること(雇用期間を定めた労働契約であっても繰り返し更新されることが見込まれる場合を含む)

15.労災保険

労災保険の給付対象は、雇用形態や勤務時間を問わない

●労災保険(労働者災害補償保険)
労働者が業務上負傷したり、疾病にかかった場合、使用者は必要な療養を行ったり、療養の費用を負担しなければなりません。(労働基準法第75条)
そこで、労働者が業務上の事由や通勤によって、負傷したり、疾病にかかった場合などに、必要な補償をする保険制度として労災保険があります。(労働者災害補償保険法第1条)

●労災保険の適用範囲
労働者を1人でも雇用する事業所は、すべて強制的に加入することになっており雇用される労働者は、その雇用形態、勤務時間を問わずすべて補償の対象となります。(労働者災害補償保険法第3条)

●保険料の負担
保険料は事業の種類に応じて定められ、全額事業主負担です。(労働者災害補償保険法第24条、徴収法第10〜31条)

●給付の種類

業務災害の場合 療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、
遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付
通勤災害の場合 療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付
葬祭給付、傷病年金、介護給付

●通勤災害の認定
通勤途上の負傷、疾病なども給付の対象になります。通勤途上と認定されるためには、合理的な経路・方法での往復が必要ですが、日常生活に必要最小限度の買物程度なら、いったん経路を外れても、通常経路に戻れば通勤は継続しているとみなされます。

16.健康保険・厚生年金保険

一定の要件を満たすパートタイム労働者には、加入が義務付けられる

●健康保険
労働者やその家族が、私生活上の原因により病気やケガ又は出産をした場合、それがもとで会社を休み賃金が出ない場合などに、必要な医療給付や手当金などを支給するものです。(健康保険法第1条)

●厚生年金保険
労働者の老後の生活保障を主な目的としていますが、障害を負った労働者や労働者の遺族の生活を保障する役割も果たしています。(厚生年金保険法第1条)

●健康保険・厚生年金保険の加入
原則として、常時5人以上の従業員がいる事業所とすべての法人事業所は、健康保険と厚生年金保険に加入しなければなりません。そして、これらの事業所に使用される人が被保険者となります。(健康保険法第13条、厚生年金保険法第6条)

●保険料の負担
保険料は、被保険者の賃金などから算出した標準報酬月額に一律の保険料率を掛けて計算し、事業主と被保険者が原則として半額ずつ負担します。(健康保険法第71条の2、72条、厚生年金保険法第81条、82条)

●パートタイム労働者に対する適用要件
1日又は1週間の所定労働時間及び1月の所定労働日数が、同じ事業所で同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間・日数のおおむね4分の3以上あること。

この要件に該当するパートタイム労働者を雇用している場合、事業主は、社会保険事務所へ被保険者取得の届出を行う必要があります。

17.高年齢の短時間労働の促進

パートタイム労働を希望する高年齢者に対して適切な雇用機会を提供するように努めること

本格的な高齢化社会の到来を迎えて、経済社会の活力を維持し発展させていくためには、高年齢者の高い就業意欲を活かし、その能力を有効に発揮させていくことが必要であり、今後特に60歳台前半層の雇用対策が重要となります。
こうした高年齢者については、健康、体力等の状況によって個人差が大きくなり、就業ニーズも多様化し、パートタイム労働を希望する者も増大するので、これに対応し、事業主はパートタイム労働を希望する高年齢者に対して適切な雇用機会を提供するよう努めることが望まれます。

18.セクシュアルハラスメント

事業主は職場でセクハラが起こらないように配慮すること(男女雇用機会均等法第21条)

●セクシュアルハラスメント防止のために配慮すべき事項

項目 配慮の例
事業主の方針の明確化と周知・啓発
  1. 社内報、パンフレットなどの広報・啓発資料に掲載し、配布する。
  2. 服務上の規律を定めた文書に記載し、配布・掲示する。
  3. 就業規則で規定する。
  4. 意識啓発のための研修・講習などを実施する。
相談・苦情への対応 <窓口の明確化>
  1. 相談・苦情に対応する担当者をあらかじめ定めておく。
  2. 苦情処理制度を設ける。
<適切・柔軟な対応>:相談・苦情を受けた場合には、
  1. 人事部門との連携等により円滑な対応を図る。
  2. あらかじめ作成したマニュアルに基づいて対応する。
事後の迅速・適切な対応 <事実関係の迅速・正確な確認>
  1. 相談・苦情に対応する担当者が事実関係の確認を行う。
  2. 人事部門が直接事実関係の確認を行う。
  3. 相談・苦情に対応する担当者と連携を図りつつ、専門の委員会が事実関係の確認を行う。
<適切な対処>
  1. 事案の内容や状況に応じ、配置転換などの措置を講ずる。
  2. 就業規則に基づく措置を講ずる。

●プライバシーの保護
セクシュアルハラスメントに関する被害者・関係者の個人のプライバシーにかかわる部分の保護には、特に留意し、その旨を周知しておくこと。

●不利益取扱いの禁止
セクシュアルハラスメントに関して、女性労働者が相談をしたり、苦情を申し出たことを理由として、その女性労働者が不利益な取扱いを受けないように留意するとともに、その旨を周知しておくこと。

セクシュアルハラスメントに関する相談は、神奈川女性少年室(H.12.4.1から神奈川労働局雇用均等室に改称)、かながわ女性センター、商工労働センターなどまで。また、(財)21世紀職業財団では、セクシュアルハラスメント従業員研修、防止実践講習、防止取組に関する相談受付などをしています。

19.疑似パート・正社員への登用

呼び名はパートでも、正社員と同様の就業実態にある者には、これに即した処遇をするように努めること
正社員募集に当たっては、企業内のパートタイム労働者に対し応募の機会を優先的に与えるよう努めること

●疑似パート
わが国には、所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じで、通常の労働者と同様の就業実態にあるにもかかわらず、処遇や労働条件等の面で通常の労働者と区別して取り扱われている労働者がおり、他国にはみられない特徴となっています。これらの労働者に対しては、名称によることなく実態に即して通常の労働者としてふさわしい処遇をするよう努めましょう。
※ここでいう「ほとんど同じ」とは、
「所定労働時間が通常の労働者よりも短いけれども、その程度が一割から二割程度までに至らないこと」とされています。

●正社員への登用
パートタイム労働者の中には、就業期間の長期化等により通常の労働者として雇用されることを希望する者がみられます。通常の労働者を募集しようとする場合に、募集しようとする業務と同種の業務について応募要件を満たすパートタイム労働者が企業内にいるときは、パートタイム労働者の雇用の安定、能力の活用、モラール向上等を図る観点に立ち、企業外からの募集に先立って、応募の機会を優先的に与えるように努めましょう。

20.短時間雇用管理者

常時10人以上のパートタイム労働者を雇用する事業所は、短時間雇用管理者を選任するよう努めること

パートタイム労働者には、多くの場合、通常の労働者と異なる雇用管理が行われているとともに、個々のパートタイム労働者の間でも種々多様な労働条件が設定されています。そのため多くのパートタイム労働者を雇用する事業主自らがすべてのパートタイム労働者についてきめ細かな雇用管理を行うことは容易ではありません。そこで、事業主は、事業所におけるパートタイム労働者の雇用管理の改善等を図るための体制を整備するため、常時10人以上のパートタイム労働者を雇用する事業所ごとに、短時間雇用管理者の選任に努めなければなりません。

●短時間雇用管理者の業務

  1. パートタイム労働指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項について、事業主の指示に基づき必要な措置を検討し、それを実施すること。
  2. 1.について、必要に応じ関係行政機関との連絡を行うこと。
  3. パートタイム労働者の労働条件、就業環境などに関し、パートタイム労働者の相談に応じること。

●短時間雇用管理者の選任
選任は事業主が行い、パートタイム労働指針に定める事項その他のパートタイム労働者の雇用管理の改善などに関する事項を管理させるために必要な知識及び経験を有している者から行う。
「必要な知識及び経験を有している者」
短時間雇用管理者の職務を遂行するに足る能力を有する者で、事業所の人事労務管理について責任を有する者、例えば人事労務担当部課長以上の者がよいでしょう。

●短時間雇用管理者氏名の周知
短時間雇用管理者を選任したときは、その氏名を事業所の見やすい場所に掲示したり、書面で交付するなどして、パートタイム労働者への周知を図りましょう。
短時間雇用管理責任者の選任届などについては、神奈川女性少年室(H12.4.1から神奈川労働局雇用均等室に改称)まで

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