社会保険労務士 工藤総合保険事務所

今月のQ&A(質問と答え)

なぜ、老齢厚生年金を繰下げて受給できる制度が新たに設けられたのですか、教えて下さい。


Q1 なぜ、老齢厚生年金を繰下げて受給できる制度が新たに設けられたのですか、教えて下さい。

A1 平成12年の年金制度改正において、60歳台後半の老齢厚生年金の受給権者に対し在職支給停止制度が導入されたことに伴い、老齢厚生年金の繰下げ受給制度が廃止されました。
しかし、実際には65歳以後も就労し続ける高齢者が増加し、リタイア後から年金の受給を希望する人が多いことから、老齢厚生年金を繰下げて受給できる制度が新たに設けられて、平成19年4月1日から実施されています。
以下、4月実施の老齢厚生年金の繰下げ受給制度のしくみ等について説明します。

Q2 今年4月から実施されている老齢厚生年金の繰下げ受給制度について教えて下さい。

A2 老齢給付は原則として65歳から支給されますが、老齢厚生年金の受給権を有する
人が、66歳以後から年金を受け取りたい場合は、その希望する年齢から年金を受給することができます。これを繰下げ受給制度といい、本来の老齢給付の額に一定額が加算されます。なお、この繰下げ受給制度の適用を受けるのは、昭和17年4月2日以後生まれの人です。

Q3 65歳になるまで特別支給の老齢厚生年金を受けていた人も、繰下げの申出はできるのですか。

A3 特別支給の老齢厚生年金の受給権は、65歳になると消滅し、新たにその2階部分である報酬比例部分は老齢厚生年金に、1階部分の定額部分は老齢基礎年金として受給権が発生します。したがって、特別支給の老齢厚生年金を受けていた人であっても老齢厚生年金の繰下げはできます。

Q4 受給権取得日から1年を経過した日(66歳になった日)後に、たとえば夫が亡くなり遺族厚生年金を受けられるようになったときには、老齢厚生年金の繰下げの申出はできないのですか。

A4 年金給付等の受給権者となった人でも老齢厚生年金の繰下げ受給の申出はできます。
ただし、遺族厚生年金の受給権者となった日後に老齢厚生年金の繰下げ受給の申出をしたときは、受給権者となった日(繰下げ受給の申出をした日でなく、遺族厚生年金の受給権者となった日)に繰下げ受給の申出があったものとみなされます(図1参照)。繰下げ受給を希望する人が他の年金給付等の受給権者となった場合には、速やかに繰下げの申出をした方がよいでしょう。
前掲のとおり申出が遅くなってもその間の繰下げ加算額はつきません。

図1
老齢厚生年金の受給権発生 遺族厚生年金の受給権発生 老齢厚生年金の繰下げ受給の申出
65歳
67歳
68歳
遺族厚生年金
繰下げの老齢厚生年金
この間の加算額はつかない

Q5 年金を繰り下げて受けると、年金額は増えるのですか。

A5 老齢基礎年金・老齢厚生年金を繰り下げて受ける場合は、年金額が増えます。加算額は、生年月日により次のとおり異なります。
1)昭和12年4月1日以前生まれの人
老齢基礎年金・老齢厚生年金ともに繰下げ(請求は一緒に行います)ができます。加算率は、年を単位に、繰下げの申出日に応じて12%〜88%の範囲で定められています。
2)昭和12年4月2日から昭和16年4月1日までの間に生まれた人
老齢基礎年金のみ繰下げの申出ができます。この場合の加算率は、1)と同様、年を単位に12%〜88%です。
3)昭和16年4月2日から昭和17年4月1日までの間に生まれた人
老齢基礎年金のみ繰下げの申出ができます。この場合の加算率は、月を単位に
0.7%刻みとなります。したがって、最大でも42%で前掲(88%)の半分にも満たないことになります。
4)昭和17年4月2日以後生まれの人
老齢基礎年金と老齢厚生年金両方の繰下げの申出ができます。この場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を一緒にもできますし、老齢厚生年金単独でもできます。加算率は月を単位に0.7%刻みです。

Q6 65歳以後在職する場合であって、給与が高額で年金の全額が支給停止となる場合でも、老齢厚生年金の繰下げの申出はできるのですか。

A6 給与が高額であるため、老齢厚生年金が全額支給停止になるなら、この際本年金を繰下げて、本来の年金額に加算額を上乗せした額を受け取った方が得かもしれないと思い、繰下げの申出をすることはできます。ただし、65歳から厚生年金保険の被保険者として在職している人が、たとえば70歳到達時に繰下げの申出をした場合であっても、加算額がつくのは、一部でも老齢厚生年金が支給される場合です。
ちなみに、65歳から老齢厚生年金の全額が支給停止となっている人が、70歳以後(年齢の上限はありません)も引き続き厚生年金保険の適用事業所に使用される場合には、その年金額と賃金に応じて老齢厚生年金の一部または全部が支給停止(今年4月から実施されている制度で、調整方法は、60歳台後半の在職支給停止制度と同じ)となります。したがって、高齢者が、この間に亡くなった場合は、生涯において老齢厚生年金は全く支払われないことになります。ただし、老齢基礎年金は支給されます。

Q7 65歳以後、在職支給停止により年金が支給停止となった場合の繰下げ加算額について教えて下さい。

A7 65歳から70歳になるまでの間、老齢厚生年金が一部支給停止となっていた人と全額支給停止となっていた人が70歳になったときに支給繰下げの申出をした場合の繰下げ加算額は、図2のようになります。
なお、70歳になったときに、老齢基礎年金の繰下げの受給の申出をした場合には、本来の年金額に42%が加算されます。

図2
1)老齢厚生年金の全額が支給停止となっている場合
65歳
年金の全額が支給停止
70歳
繰下げ加算額は全くつきません
→繰下げの申出
2)老齢厚生年金の一部が支給停止となっている場合
65歳
年金の全額が支給停止
70歳
支給停止されていない部分に繰下げ加算額がつきます
→繰下げの申出

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