社会保険労務士 工藤総合保険事務所

今月のQ&A(質問と答え)

社会保険の定時決定で注意する点を教えて下さい。


Q1 社会保険の定時決定とはどういうものでしょうか?

A1 定時決定とは、毎年定時(7月1日) に標準報酬を見直す(決定)ことをいいます。社会保険( 健康保険及び厚生年金保険)においては、保険料の徴収や、保険事故(健康保険はケガ、病気、死亡、出産、厚生年金保険は老齢、障害、死亡)が発生した場合の保険給付は、原則として、実際に支給される報酬月額(給与)ではなく標準報酬月額に基づき決定されます。
社会保険の保険料額は、雇用保険のように毎月実際に支給される給与の額に応じて決定されるわけではなく、定時決定で決められた標準報酬月額をもとに計算されます。
また、定時決定で決まった標準報酬月額は、給与の変動があった場合でも、原則としてその年の9月から翌年の8月まで固定されます。そこで、この標準報酬月額を毎年一定の時期に見直すことにより、実態に即した保険料の徴収と保険給付を行うことを目的に定時決定が行われます。
ちなみに、報酬月額とは、毎月被保険者に支給する給与のことで、基本給、通勤手当、家族手当、残業手当などで構成されます。この報酬月額をいくつかの等級に区分した仮の報酬が標準報酬といわれるものです。

Q2 定時決定の対象となるのはどのような被保険者ですか?

A2 定時決定の対象者は、毎年7月1日時点において適用事業所に使用される以下に該当する被保険者全員です。
1)5月末日までに入社した人
2)7月1日以降に退職する人
3)欠勤中の人
4)休職中の人(育児休業、介護休業中を含む)
一方、次の人は定時決定の対象から除かれるため、算定基礎届に記載する必要はありません。
1)6月1日以降に入社した人
2)6月末日までに退職した人
3)7月に月額変更届(※1)を提出するか、8月または9月(※2)に提出する予定の人 
※1 月額変更届は、固定的賃金の変動または賃金体系に変更があった場合であって、3ヵ月すべての月の報酬支払基礎日数が17日以上あり、固定的賃金の変動した月以後引き続く3ヵ月間の報酬の総額を3で割った額と現在の標準報酬月額との間に、原則として二等級以上の差を生じたことという要件を満たしたときに届出るものです。
※2 都道府県によって記載方法が異なりますので最寄の社会保険事務所にお問い合わせください。

Q3 報酬とはどのようなものを指すのでしょうか?

A3 社会保険では、被保険者が労働の対償として事業主から受けるすべてのものを報酬(金銭によるものと現物によるものとを問わない)としています。したがって、賃金、給与、報酬、賞与、手当など名称に関係なく、原則として報酬となります。
反対に報酬とならないものに、1)年3回以下支給される賞与、2)事業主が恩恵的に支給する結婚祝金、災害見舞金、病気見舞金、死亡弔慰金、3)事業主以外の者から支給を受ける傷病手当金(健康保険)、休業補償給付(労災保険)、年金、恩給、4)被保険者の財産収入による家賃、預金利子、地代、5)臨時に受ける大入り袋、6)実費代償的な出張旅費、7)その他退職金、解雇予告手当などがあります。

Q4 交通費(通勤手当)はどのような扱いになるのですか?

A4 交通費(通勤手当)については、支給額の全額が報酬となります。また、定期券を1年単位で支給している場合は、12で割って1ヵ月当たりの額を求め報酬とします。
通勤手当を算定基礎届に記入する場合、現金で支給している場合は、「通貨によるものの額」の欄に、定期券や回数券で支給している場合は、「現物によるものの額」の欄に記入します。

Q5 算定基礎届に記載する報酬月額はいつの金額ですか?

A5 算定基礎届に記載する報酬月額は、実際に4月中、5月中及び6月中に支給した社会保険料等控除前の総支給額です。

Q6 報酬支払基礎日数とは、どういうものですか?

A6 報酬支払基礎日数とは、報酬を計算する基礎となる日数をいいます。
(1)月給制の場合
その月に何日休んでも給与の額が変わらないため、出勤日数に関係なく暦日数が支払基礎日数となります。
(2)日給月給制の場合
欠勤したときには、その日数分に応じて給料が差し引かれる日給月給制の場合は、就業規則や給与規程等で定めてある欠勤控除の規程に基づき、会社が定めた日数から欠勤日数を差し引いた日数が支払基礎日数となります。
(3)日給制の場合
出勤(稼働)日数(有給休暇を含む)が支払基礎日数となります。
定時決定の対象となる4月、5月、6月の3ヵ月間はいずれも支払基礎日数が17日以上あることが要件ですので、17日未満の月がある場合は、その月を除いて平均額を出します。
なお、短時間就労者の支給基礎日数については、次のように取扱われます。
1)3ヵ月とも17日以上ある場合・・・3ヵ月の報酬額を3で割ります。
2)1ヵ月でも17日以上ある場合・・・17日以上ある月で決定します。
3)3ヵ月とも15日以上17日未満の場合・・・3ヵ月の報酬額を3で割ります。
4)15日以上17日未満の月がある場合・・・その月だけで決定します。
5)3ヵ月とも15日未満である場合・・・従前の標準報酬月額に基づき決定します。

Q7 月の途中で入社した被保険者で、給料額を日割り計算している場合はどうなるのでしょうか?

A7 日割り計算した場合、その額は本来の支給額ではありません。このような場合は入社月の翌月以降から対象となります。

Q8 保険者算定について教えて下さい。

A8 通常の算定方法により報酬月額が算定できない場合や著しく不当になるときには、保険者算定(修正平均)により算定します。修正平均した報酬月額とは、9月以降に被保険者が受けると予想される額で、通常の報酬を受けるとした場合の報酬月額をいいます。

Q9 育児休業をしている被保険者がいます。どのように手続きをしたら良いのでしょうか?

A9 育児休業等により、3ヵ月とも給与の支払がない場合は、休業直前の標準報酬月額で決定されます。その間会社が手当などを支給している場合であっても、報酬支払基礎日数が17日未満であるため、従前の標準報酬月額となります。

Q10 体調を崩して休職してしまっていた場合などはどうなるのでしょうか?

A10 病気欠勤、休職などで、報酬支払基礎日数が17日未満の月がある場合は、17日未満の月を除いて算定します。また、3ヵ月間とも欠勤した場合は、「保険者算定」として、休業直前の標準報酬を持って決定します。

Q11 70歳以上の従業員がいます。どうしたらよろしいのでしょうか?

A11 厚生年金保険の適用事業所に雇用される70歳以上の高齢者は、在職中であっても被保険者とはなりません。したがって、保険料も徴収されませんが、60歳台後半の在職老齢年金のしくみが適用されることから、年金額の調整に必要となる報酬月額及び賞与の金額を把握するために、通常の「算定基礎届」と一緒に、「70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届」を提出しなければなりません。
 なお、この届出が必要な高齢者は、所定労働時間数と所定労働日数が一般の正社員と比べておおよそ4分の3以上あり、過去に厚生年金保険の被保険者期間がある人(老齢厚生年金を受けられる人)です。

Q12 提出期限や提出先など手続きについて教えてください。

A12 7月1日から7月10日までに、「被保険者報酬月額算定基礎届」に以下の書類を添付して、政府管掌事業所は管轄社会保険事務所、組合管掌事業所は管轄社会保険事務所及び健康保険組合、厚生年金基金に加入している事業所は当該厚生年金基金に提出します。
1)被保険者報酬月額算定基礎届総括表
2)被保険者標準報酬月額算定基礎届総括表附表
3)賃金台帳・タイムカード等
4)源泉所得税領収証書など
※都道府県によって添付書類等が異なりますので最寄の社会保険事務所にお問い合わせください。

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