社会保険労務士 工藤総合保険事務所

今月のQ&A(質問と答え)

年金と雇用保険、健康保険等の保険給付との調整について教えて下さい。


Q1 65歳になるまで支給される、特別支給の老齢厚生年金(以下、「年金」という)の受給権者が、退職後失業認定を受けて求職活動をするときには雇用保険から基本手当が支給されますが、年金と基本手当は調整があると聞きました。詳しく教えてください。

A1 基本手当を受けるときは、受給資格者(基本手当を受けられる人)が住所地のハローワークに求職の申込みをした月の翌月から、基本手当の所定給付日数を受け終わったときまたは受給期間(原則として離職日の翌日から1年)が満了する月までの間、年金は全額支給停止となります。

この期間には、待機期間、給付制限期間及び基本手当を受給した日も含まれます。従って、たとえば1日でも基本手当を受けてしまうとその月は年金が支給停止となり、反対に基本手当を受けたとみなされる日が1日もない月等は年金が全額支給されることになります。

なお、基本手当の所定給付日数を受け終わったときまたは受給期間が満了したときに、それまで支給停止されていた年金の事後精算が行われ、多く停止されていた場合には、一定の算式により年金が戻されることになります。

事後精算の例:基本手当の所定給付日数が150日あり、年金が5ヵ月支給停止されたものの、実際に基本手当の支給を受けた総日数が110日であった場合には、

5ヵ月−(110日÷30)= 5 − 3.666(1未満の端数は1に切り上げる)= 1ヵ月
となり、1ヵ月分の年金がさかのぼって支給されることになります。

Q2 定年後継続雇用制度を利用して短時間労働者として働いていました。給与が定年時に比べて半額程度に下がったため基本手当はかなり低いと思います。できれば年金を受けたいのですが、それはできますか。

A2 年金は生涯の標準報酬月額等を平均した額を基準に計算されるのに対し、基本手当は離職直前の6ヵ月の賃金を基礎に計算されますので、通常は年金額より基本手当の額が高くなる場合が多いと思われます。

しかし、短時間労働者として低賃金で就労している場合などは、年金額より基本手当の額が低くなる場合もあります。
再就職の意思があり年金を選択する場合は、失業の認定を受けずに、年金を受けながらハローワークなどで求職活動をする方法もあります。

ハローワークで失業の認定を受けると、原則として年金の全額が支給停止となりますので、注意が必要です。

ちなみに基本手当は、
1)離職により被保険者の資格喪失の確認を受け、
2)労働の意思及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、
3)原則として離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヵ月以上あること、という要件を満たさなければ支給されません。

Q3 もうすぐ60歳で定年を迎えます。国民年金に加入した期間が長いこともあり、定年になったらすぐに老齢基礎年金を繰上げ請求したいと思っています。この場合、老齢基礎年金と基本手当は支給調整されるのですか。

A3 基本手当と支給調整が行われるのは、老齢または退職を支給事由とし、65歳未満の人に支給される次の年金です。
したがって、60歳から老齢基礎年金を繰上げ受給しても基本手当との調整は行われません。

1)老齢厚生年金
2)国家公務員共済組合法による退職共済年金
3)地方公務員等共済組合法による退職共済年金
4)私立学校教職員共済法による退職共済年金

Q4 定年後すぐに求職の申込みをしたのですが、ケガをして入院することになりました。当分の間働くことはできません。このような場合、年金と雇用保険の傷病手当とは併給されるのですか。

A4 傷病手当は、受給者資格が離職後住所地のハローワークに求職の申込みをした後引き続き15日以上(15日未満の場合は基本手当が支給される)傷病のため職業に就くことができない場合に、基本手当に代えて支給される雇用保険上の給付です。

傷病手当(支給額は基本手当と同額)は、年金との調整においては基本手当に含まれないこととされていますので、年金と傷病手当は併給されます。

Q5 夫が亡くなり、遺族厚生年金を受給している59歳の女性です。もうすぐ60歳の定年となりますが、再就職を考えています。
定年後求職活動を始めたときは、遺族厚生年金と基本手当の支給調整は行われるのですか。私は20代後半で結婚し、その後家庭に入りましたので、厚生年金保険の被保険者期間は通算しても10年ほどです。

A5 遺族厚生年金を受給しながら働いている受給権者が、定年で退職すると、新たに本人の年金(10年分) の受給権も発生します。
しかし、65歳未満の者が受ける遺族厚生年金と年金は併給されませんので、いずれか一方を選択しなければなりません。この場合、以下の理由から引き続き遺族厚生年金を受けたほうがかなり有利であると思われます。

1)年金と基本手当は併給調整されますが、遺族厚生年金と基本手当間には支給調整の規定がないため併給できます。Q3のとおり、基本手当との調整対象となる年金は、老齢または退職を支給事由とする年金で、65歳未満の人に支給されるものです。
従って、65歳以上の人に支給される老齢に関する年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金(繰上げ支給の老齢基礎年金を含む)、退職共済年金)、障害に関する年金(障害厚生年金、障害基礎年金、障害共済年金)及び死亡に関する年金(遺族厚生年金、遺族基礎年金、遺族共済年金)は調整の対象になりません。

2)老齢に関する年金は雑所得として課税対象になります(質問の女性の場合は年金額が少ないので非課税になると思われます)が、遺族厚生年金は非課税です。

Q6 資格喪失後の継続給付として健康保険の傷病手当金を受けられる人には年金が支給されるのですか。

A6 資格喪失後も健康保険から傷病手当金を受けている人が、老齢または退職を支給事由とする年金給付を受けることができるようになったときには、傷病手当金は支給されません。
 ただし、老齢退職年金給付額(老齢退職年金給付が2以上あるときはその合算額)が傷病手当金を下回る場合に限り、その差額が支給されます。

Q7 雇用保険の就業手当を受ける場合、年金は支給調整されるのですか。

A7 就業手当とは、再就職日の前日までの失業認定を受けた上で、再就職日から受給期間満了日までの基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上、かつ、45日以上あることなどの要件を満たした人が、1日4時間、1週4日、週の労働時間が20時間以上であり、かつ、再就職手当に該当しない(2週間の雇用契約とか6ヵ月の雇用契約) 就労形態で職業に就いた場合に支給される雇用保険上の給付のひとつです。

この就業手当(基本手当日額の3割相当額)が支給された日については、基本手当は受給したものとみなされますが、年金との支給調整はありません。

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