社会保険労務士 工藤総合保険事務所

今月のQ&A(質問と答え)

労働者派遣の仕組みについて教えてください。


Q1 米国の金融危機に端を発した景気後退の影響で企業の収益が極端に悪化し、テレビや新聞報道でよく派遣切りのニュースを見ますが、そもそも労働者派遣とはどのようなものなのでしょうか。

A1 労働者派遣とは、事業主(派遣元という)が自己の雇用する労働者を自己のために労働させるのではなく、他の事業主(派遣先という)に派遣して派遣先の指揮命令を受けて派遣先のために労働させることをいい、この雇用形態で働く労働者のことを一般に「派遣労働者」と呼んでいます。

ちなみに、この派遣労働者の保護の観点から、派遣できる業種、派遣期間の上限、派遣を業として行うための許認可制度などの規定が労働者派遣法により定められています。

Q2 労働者派遣事業は2種類あると聞きましたが、その内容について教えてください。

A2 労働者派遣事業には、「一般労働者派遣事業」と「特定労働者派遣事業」の2つがあります。

1)一般労働者派遣事業(許可制)

特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業をいい、「派遣切り」で社会問題となっている登録型や臨時・日雇の労働者を派遣する事業がこれに該当します。簡単に言うと、仕事があるときだけ派遣会社と雇用契約を結んで派遣することになります。常用雇用労働者以外の派遣労働者を1人でも派遣する場合は、一般労働者派遣事業の許可が必要です。

2)特定労働者派遣事業(届出制)

常用雇用労働者だけを労働者派遣の対象として行う労働者派遣事業をいいます。
こちらは、派遣の仕事が無くても派遣会社に雇用義務があります。なお、「常用雇用労働者」とは、期間の定めなく雇用されている労働者、過去1年を超える期間について、引き続き雇用されている労働者、採用時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者のことをいいます。

Q3 派遣労働者との雇用関係はどうなっているのですか。

A3 雇用関係があるのは派遣元と派遣労働者の間で、指揮命令関係があるのは派遣先と派遣労働者の間になります。したがって、派遣先と派遣労働者間には雇用関係はありません。

労働者派遣の仕組みについて教えてください。

Q4 通勤手当や出張旅費は派遣元が負担すべきものなのですか。

A4 通勤手当を含む賃金については派遣元が負担します。これは、派遣労働者の雇用主は派遣元事業主であることから、派遣元と派遣先が文書による取り決めをした場合であっても派遣先が負担することはできません。
なお、派遣労働者が業務上の出張を行うために必要な出張旅費等の経費については、派遣先の負担となります。

Q5 賃金は誰が支払うのですか。労働保険及び社会保険の保険料の徴収・納付義務者と併せて教えて下さい。

A5 派遣労働者は派遣先の指揮監督を受け労務を提供し、派遣先は派遣元にその派遣費用を支払い、派遣元が派遣労働者に賃金を支払う仕組みとなっています。

したがって、労働保険に係る保険料の徴収・納付義務は派遣元が負います。また、社会保険についても使用関係は派遣元との間にありますので、同様の取扱いとなります。

Q6 派遣期間中にトラブルが発生したときには、誰が処理するのですか。

A6 派遣労働者からの苦情処理は、派遣元責任者及び派遣先責任者がその義務を負います。派遣元事業主及び派遣先は、派遣労働者からの苦情の申出を受けたことを理由として不利益な取扱いはできません。

また、派遣就業に関する違法行為を厚生労働大臣に申告したことなどを理由に、解雇その他不利益な取扱いをすることも禁止されています。これに違反した派遣元事業主及び派遣先には罰則が科されますので注意が必要です。

Q7 先日、得意先の1つが倒産したため、労働者派遣契約が一方的に打ち切られました。
すぐに新しい派遣先を確保できないことから、そこへ派遣していた労働者を即時解雇したいのですが、雇用契約を終了することはできますか。

A7 派遣元と派遣先間の契約と雇用契約は別個のものですので、派遣契約が解除されたからといってすぐにその派遣労働者を解雇することはできません。

これは、雇用契約は派遣元と派遣労働者間の契約であり、派遣契約は派遣元と派遣先の企業間の契約であるためです。また、派遣契約の解除に伴って、派遣労働者と派遣元事業主との間の雇用契約期間を当然に短縮することもできません。

なお、派遣契約を解除する場合の措置については、就業条件明示書に明示しなければならないことになっています。
ちなみに、労働者派遣法では、派遣先からの派遣契約の不当な解除を制限するため、「派遣先は、派遣労働者の国籍・信条・性別・社会的身分・派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として、労働者派遣契約を解除してはならない」と定めています。

Q8 派遣先が派遣契約を中途解除する場合、派遣先が行わなければならない措置がありますか。

A8 具体的には次の措置が規定されています。

1)派遣元の合意を得るとともに、あらかじめ相当の猶予をもって派遣元に申し入れること

2)派遣先の関連会社での就業のあっせんをするなど派遣労働者の新たな就業機会を確保すること。

3)2)ができないときは、遅くとも30日前に予告し、予告しない場合は派遣元に派遣労働者の賃金相当分を支払わなければならないこと。

また、派遣元も派遣先と連携して、派遣先の関連会社での就業のあっせんを受けるなど、派遣労働者の就業機会を確保するようにしなければなりません。

Q9 派遣元事業主は、派遣契約を中途解除され次の派遣先が見つからない間も、労働者に賃金を支払わなければならないのですか。

A9 次の派遣先がなく休業させる場合であっても、雇用期間満了まではこの派遣労働者と派遣元との雇用契約は継続していますので、賃金を支払わなければなりません。
ちなみに、休業期間中の休業手当は、労働基準法に基づき、少なくとも平均賃金の6割相当額以上と定められています。

Q10 やむを得ず解雇を行う場合は、何か補償が必要になりますか。

A10 労働基準法では、解雇をする際には、原則として、派遣元は労働者に対して少なくとも30日前に予告(予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を支払う必要があります)をするか、それができないときには30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないと定めています。

なお、解雇予告や解雇予告手当の支払いをした場合であっても、解雇を行う場合には合理的理由が必要で、それがない解雇は解雇権濫用として無効になります。

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