社会保険労務士 工藤総合保険事務所

判例研究

社外労働者に対する安全配慮義務


大石塗装・鹿島建設事件(最高裁昭和55年12月18日第一小法廷判決)

事件の概要:

建設会社Y1から鉄骨塗装工事を下請けしたY2塗装会社の従業員であったAは、昭和43年1月22日地上31mで塗装工事に従事していたときに地上に墜落し、即死した。
亡Aの両親X1、X2およびAの弟妹X3〜X7は、元請Y1・下請Y2両社に対して安全配慮義務の不履行ないし不法行為を理由として、亡Aの逸失利益の賠償、Xら固有の慰謝料、およびこれらの金員に対する事故発生日の翌日からの遅延損害金の支払いを求めて提訴した。

第一審判旨 (福岡地裁小倉支部判決昭和49年3月14日)

第二審判旨 (福岡高裁判決昭和51年7月14日)

最高裁判決・・・一部棄却、一部破棄自判

解 説:

  1. 安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定まってない債務であり、債権者から履行の請求(訴状の送達が多い。本件では一審準備書面交付の昭和48年11月26日)を受けたときに履行遅滞となる。
  2. 安全配慮義務違反の債務不履行により死亡した者の遺族は、固有の慰謝料請求権を有しない。

安全配慮義務の法的性質
   安全配慮義務の法的性質に関しては、次のような見解があるが、現在なお定説はない。

  1. 雇用契約ないし労働契約上の付随義務としての保護義務としてとらえる見解
  2. 労働者の生存権に由来する労働契約上の本質的義務とする見解
  3. 付随義務というより給付義務そのものであるとする見解
  4. 安全配慮義務者が相当な危険防止措置を講ずべき善管注意義務を負う「通常の安全配慮義務」と、万全の事故防止措置を義務者に求める、いわば結果責任に近似した義務としての「絶対的な安全配慮義務」に二分する見解

安全配慮義務の内容
   基本的に次の3つの説がある。

  1. 業務の遂行が安全になされるように、業務管理者として予め予測しうる危険等を排除できるような人的物的諸条件を整えることに尽きるとする説(他の被用者が業務遂行上必要な注意を怠らないようにして、危険の発生を防止すべき義務までも含むものではないとする説)
  2. 1.の義務内容にとどまらず、使用者の支配管理をうけて業務に従事する者が、業務遂行上危険の発生を防止するために尽くすべき注意義務も安全配慮義務の内容になるとする説
  3. 労働者の業務中の活動全般にわたって、その生命・健康等の安全を確保することに向けられた使用者の本質的義務であり、労働者自身の過失、第三者の行為、不可抗力が介在する場合は別として、労働者の生命・身体に対する安全それ自体を確保すべき高次の義務であるとする説

安全配慮義務の違背によって問題となるのが労災補償ではなく損害補償であることを考えると、安全配慮義務を使用者の無過失責任に近いものととらえる3.説は必ずしも適切であるとはいえない。安全配慮義務の認められるべき根拠が使用者・国の支配管理作用にあることからいえば1.説を妥当とすべきであろう

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